ロマンチック街道を南下して、ノイシュバインシュタイン城(白鳥城)で有名なフッセンから約35km程、西へ向かうと、チーズの産地であるアルゴー地方のケンプテンに到着する。ギリシャの地理学者、ストラボンによって名付けられた、この地ケンプテンは、ラテン語でケルトスの町と言う意味があるらしい。約2000年前のローマ時代の神殿遺跡、その時代に使用された浴場の遺跡なども発掘され、さらにドイツ国内のすべての町の古文書も保管されており、歴史的にも興味深い町である。しかしながら、海外からの旅人にとってミュンヘンから、1時間半、南西鉄道で来た、この地ケンプテンには、レンタカーもなく、地元に知り合いでもいないかぎり、不便な町である。だからこそ、都会では味わうことのできないドイツの味がある町なのです。
高台から情緒あるケンプテンの町を一望すると、ドールハウスがそのまま実物大の大きさになったような建物や、石畳の通り、その場にいるだけで忙しい毎日を忘れ、幸福な気分にさそわれる。名物店主のおじいちゃまのいらしゃる"Puppen welt in
Illertor"は、ドールハウスショップの中でも豊富なアイテムを揃えている。小人達が迎えてくれた階段を登り、店に入ると、世界各地から入手したドールハウスや小物達が所狭しと飾られている。お店でありながら、博物館のようです。夢ある心の持ち主なら、一日中でも見入ってしまうことでしょう。白髪の御主人がにこやかに次々と商品を説明してくれる。動くミシンや音の出る蓄音機・・・・・これらは、ドイツ製だよと誇らしげに見せてくれたのは、どれもBodo社のものばかり。Bodo社の製品は、ドイツが誇るドールハウスメーカーなのだと痛感した。
そして、今回の旅の目的であるBodo社を尋ねてみた。車窓からの眺めは、どの家も、決められた屋根の色、壁の色で統一されていて、窓辺に咲きほこる花の色を引き立てている。そして町の中央には教会が必ずや見える。広々とした緑の丘には、牛達が絵本の中にでも出てくるように、のんびりと草をほうばる。Bodo社はケンプテンから車で北東に向かって約30分程行った小さな町、ヴィルドポールズリードにある。アルプス山脈を見渡せる高台に建てられたガラス張りの社屋は、1997年4月に建てられたばかりのニュー社屋一歩足を踏み入れると木の香りが温かく迎えてくれる。メインフロアーは、社内で作られたウッドキャビネットがディスプレイされ、デザイナー、エルナーマイヤー女史手作り人形の生活の場となっている。
お忙しい中、暖かく出迎えてくださった。Bodo社長夫妻に会社の案内をしていただいた。作業は、コンピューターによってコントロールされている機械室、手作業室、ペイント室等に別れている。特に印象的だったのは、マイスターであるBodo
Hennig社長の制作室である。Bodo Hennig社のニュー商品は、毎年この部屋から生まれてくる。ここで社長自ら作られた作品は、他の作業場の多くの従業員の手によって商品化されて行くのです。アイデアがぎっしりと詰め込まれている夢の空間、そこには、Hennig氏の故郷と東ドイツの伝統的な玩具、煙出し人形の大きなものが、Hennig氏の手先を見守るかのように飾られていた。72歳のマイスターの腕前を披露していただいたが、1〜2分程でキャビネットの取っ手を作りあげてしまった。魔法の手である。
エコロジー先進国、ドイツとあってボード社においても、木屑は地下通路を通ってすべてボイラー室へと吸引され、暖房等に使われる。又、Bodo社のかわいいパッケージは、リサイクル紙から作られた下箱、燃やしても有毒な煙が出ない、透明プラスチック製の蓋となっている。私たちが感心していることが返って不思議と思われてしまうほどに、エコロジー精神は、あって当たり前の教育を小さい頃より受けているようです.「日本は、有能な先進国だから、無害なものばかりで、だからゴミの山ができても大丈夫なんだと思っていたのよ。」と真剣な顔で話しかけられてしまいました。
現在、Bodo社には、Hennig社長を含む、4人のマイスターと供に、80人の従業員、そして、コレクターの夢を作りだしている。良い品質のおもちゃを作り続けるのが、彼の喜びだというHennig社長の笑顔は、まるで現代版サンタクロースのように思えました。
お伽の国ケンプテンから、ミュンヘンに戻ると、人の数も増え、ほんの少し現実に戻る。しかし、いかにもドイツらしい、どっしりとした建物ばかり。そして、機中で一泊した後には、日本の駅のホームで人の波に押されながら歩く私。。。。。
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